Sunday, September 1, 2013

9.1

ULTRALIGHT





 最近、アウトドア雑誌でも特集が組まれているウルトラライト(以下、UL)というスタイル。初めてこのスタイル知ってからずっと、高価であってもとにかく軽量なギアを持っていかに速く歩くかを目的にしているスタイルだと思っていた。だからではないが、ULに対して少し否定的な意識があった。しかしこの認識は間違っていた。




 否定的であると言ったが、実はそんなULギアを持っている。日本のULガレージメーカーのひとつである「山と道」のサコッシュだ。それは単純にデザインがかっこいい、持っている人が少ないという理由だった。それがULとの最初の出会いだった。



山と道のサコッシュ
カラーバリエーションが豊富なのも魅力



ULの歴史を少し述べる。

 ULはアウトドア大国アメリカで生まれた。アメリカには、数多くにトレイル(自然遊歩道、登山道)が存在する。トレイルには、数時間で楽しめるものから数百キロから数千キロに及ぶロングトレイルがある。そんなロングトレイルを春から秋にかけて一気に踏破することをスルーハイクと呼ぶ。有名なロングトレイルと言えば、ジョン・ミューア・トレイルやアパラチアン・トレイルがある。ULはこうしたロングトレイルを歩くスルーハイカーによって培われてきたハイキングスタイルである。
 スルーハイクの目的であり、喜びでもある「歩く」ということに、装備や方法をシンプルに絞り込むための最も効果的な手段が「装備の徹底的な軽量化」であった。ULのベースは「少ない負担で」「長い距離を」「歩き続けること」である。ULにとって「速さ」は目的でなく結果であった。






 「速さ」を目的にしたスタイルと言えば、Light & Fast というスタイルがある。これはトレイルランニングやアドベンチャーレースのようにとにかく速く行くことを目的にしている。初めはこの Light & Fast と混同していた。




 しかし、ULのことを少し勉強してみるとULの本質は自然との関わり方、繋がり方だということが分かった。

自ら運べるものを運び
自然のなかをやさしく歩き
自然のなかでそっと静かに眠り
自然の営みに気づき
自然とのかかわりを考える

ULというスタイルは自然との関係をより濃密にするためのスタイルだった。

 ULというスタイルを目指したのはこうした哲学があったからだ。
私自身、元々山や自然の「美しさ」に魅了され山に登り、山や自然の写真を撮っていた。
それは自然が、誰かに見せるために形づくられたものでない形に美しさを感じることがあり、古代の日本から息づく「自然信仰」に基づく自然との関係に惹かれるものがあった。

 最近では、山に登っても山頂を目指すよりも森の中を歩くほうが楽しいことが多くなり、ロングトレイルにも興味が湧いてきたりと、少しずつ自分の山登りのスタイルが出来てきたと思っている。

こうした持っていた元々あった「自然に対する想い」とULの「哲学」は強くリンクしたのである。






 やはり重要なのは、「知恵」を絞り、「創造」することであると思う。
必要な道具があれば自分で創る。よりシンプルな道具があれば山道具でなくても応用することが重要である。


ZERO POINTのギアコンテナ
最低でも夏に一泊のテント泊が出来るように改良した






「歩く」という行為は「生きる」ことである。


かつて人類はアフリカで誕生し世界各地に広がっていった。人類が生きるために歩いた、人類最大の旅をイギリス人考古学者のブライアン・M・フェイガンは「グレートジャーニー」と名付けた。
また、ローマ法王のフランシスコ1世も就任式で「歩きなさい。人生とは旅である。」と語っている。


「Walk」という言葉を辞書で引くと、「歩く」という意味の他に「暮らしぶり」という意味があることからも「歩く」という行為は「生きる」ことであると思っている。

これからもULというスタイルを通して、自然との関わりを考えていきたい。









※参考図書:ウルトラライトハイキング/土屋智哉







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